近年、日本の農業は衰退する一方で、農業従事者は年々減っています。
割の合わない職業ということで、新たに農業を担う人が増えないばかりか、少子高齢化で現状の生産者が徐々に減少しているためです。
このまま日本の農業は衰退する一方なのか?
そんな中 近年、若者が就職先として農業を選ぶ傾向も、実は見受けられるのです。
従来の農業といえば、実家が農業を営んでおりその跡目を継ぐ形が多かったのですが、
農業を行う会社に就職するという形で、農業を行う若者が増えているのです。
農林水産省の調査結果、2010年の49歳以下の新規就農者人口は約1万7千人程度でしたが、2015年になると約2万3千人程度にまで増加しています。(残念ながらコロナ禍を挟んで、2021年は約1万8千人とまた減少に転じていますが。。)
農業従事者の減少スピードに比べると新規の数が少ないため、まだまだ減少に歯止めをかけるほどではありませんが、減少の一途をたどる業界においてはポジティブな傾向だと言えるのではないでしょうか。
とあるグループ会社の農業法人は全国に数十か所直営農業を運営しておりますが
本社を含む社員はとても若く平均年齢は30歳前後となっています。
社員は数百名おり100人以上が農場で仕事をしている職場です。
しかも働いている多くの若者は大学卒業後にこの農場で働いています。
大卒の若者がなぜ就職先に農業を選ぶのか?
労働基準法では、仕事が天候に左右される農業従事者には、労働時間、休憩、休日に関する規定が除外される。
つまり、農業法人では一般企業のような法定労働時間は適用されず、時間外給与は支払わなくてもいい、となっています。
しかし新規参入して法人化しているところは、率先して一般的な会社の就業規則を基本に、農業の実態にあう働き方を追求し、時間外給与の支給、出産・育児休業はもちろん、雨続きで農作業ができない日が続く週には休日を多くするなど、翌週以降に就業時間を振り替えるような就業内容で調整するようにしています。
また一方で、若者の間にスローライフという考え方が浸透してきたことも理由の一つだと思われます。
スローライフとは、バブル時代の大量生産・大量消費の考え方に対抗するようにして2000年頃に登場しました。
地域の食を大切にする地産地消や、人間らしい生活を取り戻すための生活を大切にする考え方で、過疎化が深刻な村々を活性化させるために地方に戻る若者も増加しています。
これに付随して職業としての農業を考える人が多くなり、若者の間で農業を就職先にしている原因もここにあるようです。
安全でおいしい野菜を食べたい、ギスギスした都心ではなく自然の中でのびのびと生活したいなどと考える若者も多いようです。
また企業は生産の他に、加工とも結びつけ「生産」→「加工」→「販売」までを行うことで農業の企業化と収益につなげているところもあります。
農業もまた「見える化」を行うことで従来の不安が残るイメージを払拭し、
新しい就職先の一つとして農業を選択する一つの要因になっているのではないでしょうか。
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若者が農業に参画してくることで、イノベーションが生まれます。
農業 = 非効率で割に合わない という先入観で、従来の従事者は自分たちの子供に事業継続を避けてきました。
その結果が、農業人口の減少だったわけです。
しかし、デジタルネイティブな若者は、デジタル技術を活用してその先入観を払しょくする方法を模索し、確立しつつあります。
実際、ドローンを使って害虫駆除や農薬散布を行ったりすることで、格段に人の作業を減らして効率化したり、生育データを取って分析し品質を均一化したり、と
今までは従事者の経験と勘の中で行われていたことを、誰でもできるようなシステムとして構築されつつあります。
また、全世界を苦しめたコロナ禍が、社会のデジタル化、人間のデジタルリテラシを一足飛びに促進しました。
結果、リモートワークという就業形態が確立され、地価が安く自然豊富な地方に移住して、農作業しながらシステムエンジニアの仕事をする、という人の話もよく聞くようになりました。
人間、衣食住が無ければ生きていけません。
その生命線が衰退していっては、国が栄えるはずはありません。
今後の日本農業に大いに期待しましょう。