AWSの強みと移行時の注意点
『最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。
唯一生き残るのは「変化」できる者である。』By チャールズ・ダーウィン
第2回目となる、シリーズ『オンプレミスからAWSクラウドへの移行勘所』について、今回は『AWSの強みと移行時の注意点』について執筆させていただきます。
前回のあらすじとして、『AWSとコストダウン』をテーマに、AWSとはどういったサービスなのか。また、AWSの従量課金制を最適に利用するために、スペックはもちろん、オンプレミスではあまり着目していない点にも気を付けましょうといった内容でした。
第2回『AWSの強みと移行時の注意点』について言及させていただきます。
AWSクラウドのメリット活用について
AWSには200以上ものサービスがあり、例えば、AWS Lambda(イベント発生時にコードを実行)やAWS Batch(バッチ処理をあらゆる規模で効率的に実行)があります。
AWSサービスは、拡張性が高くセキュリティ面でも安心して利用できる点は大きなメリットといえます。これらを活用することで業務効率が良くなり人的コスト削減に繋がります。
移行時の注意点を考えよう。
システム移行時間
システムを移行する際に発生するシステム停止時間をダウンタイムと言います。
移行に必要なリソース(移行計画)をAWSに提出することで、システム移行時間を算出してくれます。
ダウンタイムを最小限に抑えることは重要で、いくつかの方法があります。
①システムを段階的に移行していく方法
②AWSロードバランサ(=負荷分散装置)を使用し、サーバへの委任を分散する方法
③AWS統合ツールを使用し、データを同期していく方法
④AWSの予備リソースを確保し、障害発生時に予備リソースへリダイレクトする方法
アプリケーション環境の修正
Webサーバやアプリケーションをクラウド移行したからといって、問題なく使えるだろうと判断するのは早計です。バージョンが古いOSやミドルウェアを使用している場合に、AWS側に同環境を用意できない可能性もあります。必要に応じてWeb等のサービスへの影響を加味しましょう。また、アプリケーションは環境に合わせて修正を必要とする場合があることも頭に入れておきましょう。
システム障害への対応
AWSでは高いセキュリティと耐久性を持っており、システム障害はごく稀といえます。万が一、システム障害が発生した場合には、
①AWSは緊急対応体制を発動し原因調査を行います。そして、障害原因と影響範囲、修復予定時刻などの情報を公開し、障害修復後にも速やかにその情報を通知します。
②顧客側は公開情報を受けて、自社システムやサービスへの影響を把握し、障害による影響を最小限に抑えるために調整を行います。AWSからの復旧通知を確認し、再度システムの調整を行った上でシステムの正常性を確保していきます。
このように、迅速な障害対応を行うためには、AWSと顧客との連携が重要となってきます。自社環境に影響が及んだ場合に備えて、障害対応マニュアルを作成するなど、被害を最小限に留めるために適切な対応を行っていきましょう。
移行前後のサーバ運用方法の違い
AWSを活用することで、ハードウェア管理を自社で行う必要がなくなります。サーバルームの空調管理や保守期限切れに伴うリプレイスなどは、AWS側で運用してくれるため自社の管理責任が軽減されることは大きなメリットといえます。
また、セキュリティ面でもAWSが提供するセキュリティ対策があらかじめ設定されている為、ファイアーウォールを自社で設定する必要がなくリスクが軽減されています。但し、AWSのセキュリティも設定方法やアップデートなどで脆弱性が残ってしまう可能性も否定できませんので、定期的な脆弱性診断は行うようにしましょう。
さいごに
AWSの導入により様々なリソースに余裕が生まれることと思いますが、そこで、空いた時間を利用してSIAMとSEAMの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
SIAM(Service Integration and Management)
SIAMは、サービス統合および管理の意味です。複数のサービスプロバイダーから提供される複雑なサービスを統合し、一元的に管理するための方法論です。導入することで、ビジネスの要求に応えるためのサービス品質の向上が期待できます。
SIEM(Security Information and Event Management)
SIEMは、セキュリティ情報イベント管理の意味であり、セキュリティイベントの収集、管理、分析などを一元的に管理するための方法論です。導入することで、セキュリティインシデント(セキュリティ事故)につながる脅威の早期発見が期待できます。
サービス向上と脅威の管理は、どれだけの時間と手間を掛けても完成はありません。
SIAMとSEAMを実践することで、新たな視野を持つことができるかもしれません。
多角的な視点をもって、より良い経営戦略のために役立ててみてはいかかでしょうか。